はじめての「なろう」
最近、小説家になろうで作品を書き始めたので、それについてのお話です。
小説家になろうに投稿始めました。新人なろう作家です。対戦よろしくおねがいします。
— えある (@ennach) 2021年10月31日
『冒険者ギルド切り抜きチャンネル ~受付嬢フローレンスの交差点~』https://t.co/MYSmMDEh7t
なろう投稿について
そもそも「なんで急になろう投稿を?」という点について。
もちろんいくつか理由はあるのですが、特に大きいのは昨今急激に増えたなろう発のコミカライズ作品群の影響です。
元々なろうのお話はわりと好きでいくつか読んでいたのですが、小説となると「話は興味あるんだけど文体が好みじゃないんだよなー」みたいなのがちょくちょくあり、読む作品は結構絞られていました。それがコミカライズで興味の幅がだいぶ広がり、電子書籍や漫画アプリの普及なども相まって、いまでは多くの作品を漁ってすっかり沼にハマっています。
元々、最近は小説なりシナリオなりを書こうとしても発表場所や発表媒体に悩むことが多く、それがモチベーションにも多少なりとも影響を与えていました。「小説家になろう」も以前から選択肢には上がっていたのですが、界隈の空気感やニーズなんかを掴み切れず、二の足を踏んでいたというのが実情です。それが、コミカライズ作品などを通してなろう発の作品群に肩まで浸かった結果、「あれ、いまなら書けそうだぞ」となって、このたび書き始めたという次第です。
あとはお仕事のもろもろとの兼ね合いで、ここらでひとつライター的に動いておきたいな、と思ったというのもありますが、その辺はまあゴニョゴニョといった感じです。
で、どういうお話?
今回連載を始めたお話は、いわゆるなろう的な世界観でのハイファンタジーになります。
ある程度のお約束は踏まえつつ、一方で王道テンプレ展開からは少し距離を置いていて、チートとか異世界転生とか、そういうものは多分出てこないです。
あらすじを引用します。
冒険者ギルド――それは己が生き方を決める交差点。
受付嬢フローレンスは、冒険者ギルドが好きだった。
冒険者という、命を賭けることでしか生を繋げないならず者たち。そんな彼らが、ギルドを通して様々な人たちと縁を結び、その人生を変えていく。
クエストを仲介するだけではない。
英雄を称揚するわけでもない。
これは数多の人生が交錯する「冒険者ギルド」という交差点、その日々の中で、ならず者がその人生を変えた瞬間を切り抜き続ける群像劇。
タイトルは『冒険者ギルド切り抜きチャンネル ~受付嬢フローレンスの交差点~』。
その名の通り、なろう的世界観ではよく出てくる「冒険者ギルド」というものに焦点をあてたお話になります。
冒険者ギルド。いろんな作品にしれっと出てくる組織で、単なるクエスト仲介所で終わることも多いですが、本来この場所は、非常にエキサイティングでドラマチックな場だと思うんですよね。
ただ「冒険者」であるという共通項だけで集まった、生い立ちも背景も異なる人間たちが、己の専門性と命を捧げて金を稼ごうとせめぎ合う。そんな空間で、人と人とのドラマが起きないはずがありません。
たまたま装備を貸した縁。たまたま相席になった縁。たまたまパーティを組んだ縁。ほんのわずかな偶然が、後から見ると大きな人生の分岐点だった――冒険者ギルドは、きっとそんな『偶然』の宝庫です。
作中、受付嬢のフローレンスは、そんな冒険者ギルドのことを「交差点」と呼称します。人と人が交わる場所。人が道を曲がる場所。偶然、何かが起こる場所。たくさんの『偶然』の中の、ほんのわずかな一部を切り抜いてまとめたもの――それが、本作タイトルの由来です。もちろんYoutube的なアレをもじったものです。
もっと具体的に
本作は短編連作形式の群像劇です。
第1話は、とある元傭兵が冒険者になるきっかけの話。
第2話は、冒険者を引退しようと考えている魔術師の話。
第3話は、冒険者として活動する田舎貴族の第三子の話。(今後公開)
第4話は、ヒールが使えない治癒師の話。(今後公開)
などなど。
いずれも違う人物のお話ですが、同じ冒険者ギルド内の出来事なので、登場人物などはゆるく共通しているような感じです。
今まで発表したことのないジャンルではありますが、私がこれまで書いてきたようなお話が好きな方であれば気に入っていただけるクオリティにはするつもりですので、その辺りは安心して更新を待っていただければと思います。
今後について
最後まで書きあげて一括投稿、というわけではないので、投稿は進捗に応じて適宜という形になります。まだまだ手探りの状態なので、このブログを読まれているような方は後方腕組みしながら優しく見守っていただけると幸いです。
冒険者ギルド切り抜きチャンネル ~受付嬢フローレンスの交差点~
https://ncode.syosetu.com/n3157hh/
CyberRebeatノベライズと本作について
このたび、CyberRebeatのKindle版をリリースすることになりました!
別件のノベライズ作品に便乗した感があることは否定しませんが、間近で作業を見ていて「Kindle版! そういうのもあるのか!」みたいに思ったことも理由としては大きいです。
内容は基本的にゲーム版と同じですが、小説用に多少調整が入っています。ゲーム版との変更点はまとめて後述します。
CyberRebeatとは
で、肝心の本作について。簡単に紹介しておきます。
原作は、私が数年前に同人サークルとして企画・制作したノベルゲームです。いくつか賞をいただいていたり、あと海外展開などもしている作品になります(詳細は公式サイト(CyberRebeat -The Fifth Domain of Warfare-)より)。
最近の仕事との絡みで言うと、実はRASKさん(当時)を紹介いただいたのは本作がきっかけでした。もうちょっと具体的には、関係者の方が本作を目に留めてくださり、そこからの流れでRASKさんを紹介された、みたいな感じです。もはや懐かしささえ感じる。
ちなみに作品について、他サイトでの紹介としては以下の記事などが詳しいです。お世話になっております。
作品概要
ゲーム版の公式サイトには以下のような文言があります。
"ハッキング"。 この言葉ほど、世間の印象と実状が乖離している言葉も珍しい。 ハッカーと言えばいまだに白黒のコンソールを叩いて、ペンタゴンのシステムに侵入するかのようなイメージが蔓延しているかと思えば。 その一方で、やれ情報流出だサイバー攻撃だと、現実問題として世間では連日のようにニュース報道がなされる日々。 果たしてハッカー、あるいはクラッカーとはどういう類の存在なのか? メールにウィルスを添付していた時代と比べ、いわゆる現代の"ハッキング"とはどういったものなのか? 作中、とあるハッカーはこう言います。 "僕らにとって、世界は不安なほどに穴だらけだ"、と。 ボタン一つでネットに繋がっているOA機器が検索でき、 10ドル出せばハッキングツールが説明書付きで手に入るこの時代。 本作では"CTF"と呼ばれる、現実に存在しているハッキング競技を皮切りに、彼らの世界、その一端を描き出します。
正直これが全てで、あまり語るのも野暮なのですが、「『ハッキング』って言葉も知ってるし、なんとなく漠然と理解もしてるけど、じゃあ具体的に何をやるのかっていうと、ほとんど知らないよね?」みたいな感じが出発点です。
ですので本作は、多くのエンターテイメント作品では誤魔化されがちな「ハッキング」というものについて、できるだけ具体的に、けれども一般の人も分かるように、かつエンターテイメント性を失わないように書いたつもりです。そのため、地味だけど燃えたとか、身近に感じて怖かったとか、そういう感想や評価をいただけたことはとても嬉しかったです。
作中、基本的にハッカーなんていうのは日陰者、アウトサイダーな連中なのですが、あるいはだからこそそこには独自の矜持や正義感などがあって、それらが対立したり協力したりと、結構熱い展開があったりなかったりするかもしれません。
同人ゲーム・オブ・ザ・イヤーでは「燃え」部門をいただいたことなどからも分かるように、それらハッカーが織り成す「ハッキングシーン」というのがひとつのポイントになっていまして、そこは評価いただいているところかなと思います。あと自称はしていなかったのですが、サスペンスとか陰謀論ものとか言われていたこともあって、そういう作風が好きな方もぜひどうぞ。
(ちなみに作中でも言及していますが、「ハッカー」と「クラッカー」、「ハッキング」と「クラッキング」は、意図的に混同して使用しています。作中では「時代を経て、クラッキングという言葉が廃れたため」という設定にしてあります。)
ノベライズ版での変更点
以下のような感じです。
- 文章を小説用に調整。改行や半角文字、シーン切り替えへの対応など。
- 技術用語やその説明などを若干修正。
- 序盤の地の文などをやや調整。
- 第二章ラストに若干の新規シーン追加。
まとめ
というわけでCyberRebeatに興味持たれた方は、今回のKindle版に限らず、ゲーム版でも構いませんのでぜひよろしくお願いします。
Kindle版(ノベライズ) www.amazon.co.jp
Steam版(ゲーム) store.steampowered.com
※ゲームには一応フリー版もあるのですが、追加演出や操作性などの理由からいまはSteam版をおすすめしています。
TrymenTと「再挑戦」(ノベライズにあたって)
このたび、「TrymenT ―今を変えたいと願うあなたへ―」という作品で、ノベライズを担当させていただくことになりました!
こちらは2020/2にリリースされた作品であり、また既報の通り、iOS/Android版の正式リリースが予定されています。
ノベライズにあたっては「脚色」という肩書きの通り、基本的にゲーム版をベースとしつつ、小説として読みやすいように多少手を入れたほか、新規のシーンなどもいくつか収録されております。
詳細は上記公式サイトよりご確認ください。
以下、このTrymenTという作品について少しだけ語らせてください。
TrymenTノベライズに際して
さて、それでこのTrymenTという作品なのですが、こちらは2016年に発売されたゲーム「Re:LieF~親愛なるあなたへ~」と非常に関係が深いものの、具体的にどういった関係なのかがうまく伝わっておらず、「新作なの? 続編なの? あるいはリメイクなの?」となっている方もいるかと思います。
こちら結論から書くと、実は発売直前あたりで公式Twitterにて言及されており、「別の視点の完全新作」というのが回答となっています。
よって、「Re:LieF」体験版の日向子視点での物語のみ概ね共通しており、同時間軸なので
— TrymenT🌕小説版Kindleストアにて配信中 (@TrymenT_PJ) 2019年11月19日
「TrymenT」「Re:LieF」どちらからプレイしたかによって、もう片方の作品の見え方が変わると思います。
片方プレイ後、興味がありましたらぜひもう片方の体験版をプレイしてみてくださいね。 pic.twitter.com/4T8fGOqQQS
少なくともRe:LieFのR18シーンを削ってちょっと整理したもの、という意味での「リメイク」ではないことは確かです。登場人物に重複は多少ありますが、お話はまったく別のものになっています。
それで私は両作について異なる立場から関わっているので、その辺りについて、個人の感想を少し書いていければなと。ちなみにネタバレはありませんのでご安心ください。
私について
まず少しだけ私自身の説明を。
前作「Re:LieF」では、メインライターとして制作に参加させてもらっていました。体験版~共通ルートや最終ルートなど、まあ、そういった部分を担当しています。あと全体のシナリオ監修や一部ルートもですね。一方、今作TrymenTでは制作から外れており、完全にいちユーザーとして開発を見守っていたという立場になります。なので内容については何も知らない状態で、ほかのユーザーさん達とまったく同じように「どういう作品になるんだろう?」と期待と不安を胸にリリースを待ちわびていました。
そうしてリリースされた「TrymenT」という作品。そこにあったのは、Re:LieFと似て非なる、また別の美しい物語でした。その後、縁あって再びこうして関わることになり、またノベライズにあたりいくつか資料を読ませてもらったところ、「ああ、こういうことだったのか」と、一連の経緯などについて私としては非常に納得のいく部分がありました。
以下、その辺りについて詳しく書いていければと思います。
TrymenTとRe:LieFの関係性
この話をするには、先にRe:LieFについて話す必要があります。
Re:LieFについてはこちらから
これはおそらく初めて話すのですが、Re:LieFという作品は、製作途中で一度大きな書き直しを選択しています。
当時はちょっと開発上の問題が発生しており、私はその解決を任されての途中参加でした。いろいろと事情はあったのですが、このときプロットなどに大きくメスを入れさせてもらい、結果、もちろん大筋の設定やテーマにブレはありませんが、そこに至るまでの道筋や演出などは、当初の予定とリリースされた内容は多少見せ方が異なっています。(念のため補足しておきますが、スタッフの誰かが悪いとかそういう話ではないです)
Re:LieFをプレイした方は分かるかと思いますが、Re:LieFは非常に焦点を絞った物語です。そこが少なからず評価された点でもありますし、私もできる限りのシナリオをお届けできたつもりです。ただ創作物の常として、そこにはもう少しだけ別の見せ方、別の可能性があったのも事実ではあります。Re:LieF当時からの企画かつディレクター、そしてTrymenTではメインライターも務めている雫将維氏の世界観は、本来はもっと幻想的で、壮大で、とても視野の広いものでした。
おそらく「TrymenT」は、その世界観にもう一度挑戦しようとする作品です。
TrymenTと「再挑戦」
当の雫氏をはじめ、TrymenTに関わったスタッフの方から直接聞いたわけではないので、あくまで前作ライターとしての私見です。ただ、TrymenTをプレイして、ノベライズにあたりOmega編の資料などをこそっと読ませていただいて感じたのは、ああ、これはRe:LieF開発中にうっすらと垣間見たあの世界観だ、ということでした。
これはあくまで世界観・見せ方の話ですので、もちろん、Re:LieFの開発段階からTrymenTのキャラクターやプロットがそのまま存在していたというわけではありませんし、Re:LieFが何かを諦めた妥協策というわけでも決してありません。前作のメインライターとして、Re:LieFを楽しんでくれたユーザーのためにも明言しますが、Re:LieFはRe:LieFでひとつの完結した作品です。ただそれと同じくらい、TrymenTもまた一個の独立した作品だということです。
上述の経緯などから、TrymenTはRe:LieFの企画者でもある雫将維氏の「らしさ」が純度100%で詰まった作品になっています。本当に文章のひとつひとつ、演出のひとつひとつが、前作のそれとは違った文脈で紡がれています。TrymenTは公式にはRe:LieFの「別の視点」ということですが、これは別のキャラクターの視点という意味に重ねて、テーマに対する焦点の当て方や描き方そのものが別である、という意味でもあるのではないかと私は感じました。ビジュアルノベルではルートの違いがありますが、これはそれを作品単位にまで拡張したもの。前作経験者はそんなふうに考えてTrymenTを読んでいただくと、より一層楽しめるのではないかと思います。
ユーザーのみなさんには、制作過程や製作者がどうのというのは関係のない話です。ただ願わくば、前作Re:LieFと同様に、このTrymenTという「再挑戦」の物語をぜひ応援していただければと思います。私としては、今回はノベライズという形で、本作の魅力を広めるお手伝いができれば幸いです。
試してみるんだ、もう一度。
だからこれはきっと、彼らの再挑戦の物語だと思うのです。
(了)
ゲーム版のスタッフの記事などは以下から
ビジュアルノベル『TrymenT』と背景と葛藤と
TrymenTとあなただけが知る世界
今回発売されたノベライズは以下より。
TrymenT 1 Kindle版
TrymenT 2 Kindle版
ちなみにページ数からも分かりますが、今回発売された1,2巻はゲーム版でいうまだ序盤の内容です。完結済みと勘違いされないようご注意ください。
いちエロゲライターの東京クロノス感想
前々から気になっていた本作、ようやくOculusを手に入れてプレイしたところ色々と感じるところがあったので、基本的にはネタバレなしで思うところを書いていこうと思います。
で、誰?
「えある」という名前で、シナリオライターをやっています。
エロゲシナリオ書いたり、同人(CyberRebeat)では本作と同じくSekai Projectさんにお世話になっていたり、あとはプログラマとしてUnityでノベルエンジン作ったりなんだりしています。
VRノベルゲームは作り手側としても興味があるような立場になります。
東京クロノスのいいところ
そもそも出来がいい
VR+ノベルゲームを謳うゲームはいくつかあるようですが、 本作のような規模の作品は(話題性なども含めて)初めてだという認識です。 スタンダードなデザインが確立していない中で、本作はUIや演出表現、もっと言えばシステム面まで、 非常に考えられた上に丁寧に作られている印象を受けました。
また個人的には、本作のような前例のないシステムを破綻なく組み上げたプログラマ陣にも拍手を送りたい。
バグどころか各種演出などにちょっとした違和感すら感じなかったのは、普通にすごいことだと思いました。
ノベルゲームである
本作未プレイだと勘違いするかもしれませんが、本作は全ての動きが3Dで再現されているわけではありません。
この辺りは、以下の記事を見るとよくわかります。
https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/190319c
これは記事を見た時は苦肉の策かなあと思ったのですが、実際にプレイしてみると、動作と動作の合間がスキップ可能であることで、2Dノベルゲームにおける立ち絵切り替えと同様の体験を得ることができるようにしているのだと感じました。
例えば、作中、キャラクターは(一部演出を除いて)あまり長いモーションを見せません。
ちょっとした仕草はするものの、基本的には立ち止まって会話をして、移動する場合は暗転などを挟む。3Dでありながらテンポを損ねるような長い動作は存在せず、時には吉里吉里でいうトランジションみたいな形で動きをスキップさせたりもしていて、それが本作に2Dノベルゲーに近いクリック感を提供しています。
私はノベルゲームがとても好きな人間なのですが、本作はまさに「ノベルゲームのように」読み進めることが出来ます。自分は音声を最後まで聞かずにぱっぱと読み進めることも多いのですが、そういった読み方をしてもなんら引っかかりを覚えませんでした。
VR+ノベルゲームというからには、どうしても3Dの動作がメインでそれに文字がのっかっているものになるんだろうな、という想像をしていました。けれども本作は、ゲームスピードについては完全に文章側がイニシアチブを握っていて、その辺りは徹底的にノベルゲームであろうとしているように思えます。
(この辺、3Dアニメのほうに舵を切ったProject LUXとは対照的に感じました)
最近のノベルゲーでは、立ち絵に動きをつけたり、背景をゆっくり動かすみたいな演出をしたりしていることを考えると、3Dでそれが固定する方向に戻ったのはちょっと面白いなと思います。
VRである
ノベルゲームのように読める、とは言ったものの、それはVRの必要性がない3D紙芝居である、という意味ではありません。
もちろんVRさを露骨に生かした演出もあり、それももちろんすごいのですが(例えばキャラが真横に寄り添ったりみたいな)、個人的にはそういった露骨でない部分でのVRらしさに、あーこれは2Dでは無理だなと思うところが多々ありました。
これはちょっといくつかに分けて書いていきます。
真正面に立つキャラの存在感
2Dのビジュアルノベルと違いを感じたのは、見回せるってことよりむしろキャラクターの「そこに居る」感で、部屋にヒロインを迎え入れたシーンとかは存在感すごいなってなった
— えある (@ennach) May 26, 2019
とあるシーンで、主人公が訪ねてきたヒロインを部屋に迎え入れる場面があるのですが、部屋の入口でヒロインと対面しているただそれだけのシーンが、非常に印象に残りました。
狭い室内のシーンなせいか、キャラクターが「目の前にいる感」がすごくって、視線の高さも一緒なので本当にキャラクターと向き合っているような感覚になります。2Dの立ち絵とは印象がだいぶ異なります。
こういう些細なところで衝撃を受けるとは自分でも思わなかったです。
自分と同じ方向に立つキャラクター
これは私のプレイした中だと確かD.C.Ⅱで始めて見たのですが、2Dのノベルゲーでも、近くにいる感じや同じ方向を向いている感じを出すために、後ろ姿の立ち絵を出すことがあります。 要はそれのVR版なのですが、やはりというかなんというか、「2Dで本来やりたかったのはこれなんだよな」といった感想になりました。
並んで歩いているのが一目で分かるのは当然としても、 例えば複数対複数でキャラクターが対立するシーンでも、自分の横や前方で自分と一緒に相手と対立してくれているキャラクターには、強い「味方感」「寄り添ってくれている感」を感じました。
真後ろなど、2Dでは視界外になる場所の存在
これはホラーなどでは非常に有効そうですが、 たとえば暗い廊下のシーンなんかは、まっさきに後ろを確認するくらいの怖さがあります。
あるいは、以下のツイートのような感じ。
あとVRだと自分の横や後ろにもキャラがいるので、これで例えばパルフェ里伽子みたいな伏線されたらやばそうだなって思った
— えある (@ennach) May 26, 2019
パルフェのネタバレはここではしませんが、要するに「丁寧に画面を見ていれば気付けたかもしれない伏線」というのを、 自分の真横や真後ろのキャラクターの動きなどに混ぜられたら、 めっちゃすごいけどぜったい気付けないよなあと思ったのでした。
その他、思ったこと
VR+ノベルゲーム
表現方法としては全然「アリ」ですし、また本作は思った以上にノベルゲームしてるなと感じました。
「VRでノベルゲー? 3D空間に文字出して何が面白いんだ?」と思う方には、
ぜひ一度体験してみてほしいと思います。
今後、特にVRを生かした演出・シナリオでない作品であっても、普通にVRノベルゲーとして出てくるような予感がしますし、そうなってほしいなと強く思います。先述したように、別に露骨にVRを生かさなくても、VRであるというただそれだけでノベルゲームとして新しい価値を打ち出せていると思うので。
「ノベルゲームをVRにする必要ある?」なんてよく言われますが、本作をプレイすると、めっちゃ「あるよ!!」って言いたくなります。
ただ一方で、作るのこれめっちゃお金かかるよなあ…とも。
主に3D関係のリソースまわりには、本作も苦労したんじゃないでしょうか。あとシナリオの〆切めっちゃ早そう。しかも、本作は分かりませんがVRのゲームは普及率の関係で売上がそこまで伸びない?と聞いたことがあるので、現状だと制作のハードルは高いよなあという印象です。
東京クロノス・ロス
東京クロノスでVRノベルゲームいけるやん!ってなったのでもっとやりたいのですが、いかんせんそもそもそうしたゲームがほとんどないという状況です。つらい。
結構同じ状況のユーザーさんいるんじゃないでしょうか。最近苦しい話を聞くことも多い業界各社、これはワンチャンあるのでは…?
総評
VRノベルゲームという新しいジャンルの可能性を、大きく切り開いてくれた作品だと思います。
唯一、肝心のシナリオだけはちょっと物足りなさを覚えてしまって個人的には残念だったのですが、それでも決して悪いというわけではなく、シナリオにもちゃんと力を入れている作品だと思います。評価も高いですしね。
VR機器が必要というハードルの高さはありますが、もし2Dのノベルゲームが好きな方であれば、「VRでノベルゲーなんてしてどうするの?」なんて言わずに、ぜひプレイしてみてほしいと思います。ほんと、凄いので。
えある
余談
ちなみにVRノベルゲーム制作ワンチャンあるけどシナリオライターがいない、みたいな奇特な状況の方がいたら、ぜひお声掛けください。
Oculusつけてお話聞きにうかがいます。
そんな感じです。よろしくお願いします。